2024年07月20日
一緒に泳ぎ、夢のような時間を過ごしました 大竹しのぶ 2
朝日新聞(夕刊)2024年7月19日
7月12日 先週からの続きです。
彼女は悠久の彼方へ
娘が住む奄美大島。前回訪ねたのは冬だったので海に入ることはできませんでしたが、今回の目的は海亀を見ることだった。慣れないウェットスーツに身を包み、ドラマの撮影中の為、日焼け止めを必死に塗って帽子を被り、いざ海へ~。海の美しさと、波に身を任る心地よさと、海中の静けさの中にいる感動で、現実のことなんてすっかり忘れ、今この時を楽しむことに没頭していた。
冲にボートを出し、インストラクターの方に案内されながらシュノーケリングを楽しんでいたその時、
「いました~」。
数メートル先で、彼か右手をあげる。会える、海亀さんに会える。
私はまるで何年も海に潜っている海女さんのように、はたまた人魚にでもなったようなつもりで、シュワーッと海の中へと潜っていった(と言っても、ほんの1、2メートルだか)。
果たして--。いた。そこに確かに海亀様が。ゆっくりと悠久の時を過ごしてきた彼女(絶対彼女だ!)は、私たちが側にこようがお構いもなく、ゆっくり泳いでいた。その何ともいえない穏やかな動作と雰囲気に涙が出そうになってくる。
彼女と一緒に泳ぐ。
彼女が時折息をするために水中から顔を出せぱ、私も隣で顔を出す。プワーッ!
何て楽しいんだ、この時間が永遠に続けぱとさえ思ってしまう。そんなことを20分程続けていたら、突然彼女はまたゆっくりと悠久の彼方へと消えた。
あー、なぜこんなにも心穏やかになれるのだろう。海から上がった瞬間にまたすぐ入りたいという衝動に駆られてしまう位、美しい海だった。
そして--。先週も書いたか、その夜、娘の家のペランダから見た星々たち。頭上に輝くのではなく、目の前に空はあるものなのだ。まっすぐ伸ぱした掌の先に星たちはいて、私はその星々に包まれていた。なんということだろう。夢の中に迷いこんでしまったような美しさだ。
手の届きそうな場所で無数に瞬いている星々。その広い空間を大きく横切っているのは、天の川だ。これか。これが天の川なんだ。もう何もいらない。この景色を見られるだけで、今日も一日幸せだったといえるのだろう。自分かどれだけのものだというのだ。健康で、この星や海を見られるだけでいい。ありがとうという気持ちになる。
そんな生き方を選んだ娘に、心からのエールをおくろう。
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